私の年齢が30代に差し掛かると、ある変化が体に訪れました。それは、肋軟骨の硬化です。この現象は、日常生活において心臓や肺を圧迫し、さらには階段を上るときには一層その影響を強く感じました。私は自己の身体が変わる原因として、以前から抱えていた胸郭の変形を疑い始めました。そこで、私はその治療、手術に踏み切る決断を下しました。
問題は重度の胸郭変形(漏斗胸)で、これが内臓への負荷を増大させていました。ヘイラーインデックスという指標で見ると、私の数値は健常者の3倍にも上りました。30代を迎えると、肋軟骨の硬化が進行し、心臓や肺への圧迫感が増す一方でした。
私が医師から聞いた漏斗胸患者の状況を思い起こすと、同じような問題に直面している人は、おそらく1万人くらいいるだろうと思いました。この記事は私自身の記憶を辿るためのものなので、医療的な内容については専門医に問い合わせてください。
漏斗胸患者の状況
それは、長い間放置していた胸郭の問題についに立ち向かう日が訪れたのです。私はナス法と呼ばれる手術を受ける決断をしました。手術は無事終わり、現在は経過観察の段階にあります。体調も安定し始めたので、私はこれまでの対策を記録することにしました。30代でこの手術を受ける人の情報はほとんどなかったので、私の経験が誰かの役に立つことを願っています。
私の記憶が正しければ、ナス法は2000年代に入ってから徐々に認知度を上げ、現在では美容手術としても取り扱われています。それ以前の胸郭変形の手術は、胸部を開くことで骨を取り出し、その骨を逆にして再度取り付けるという、大規模で侵襲的なものでした。
このナス法という手術は、歯の矯正と同じ原理に基づいています。つまり、矯正器具を患部周辺に取り付け、時間をかけて適切な形に整えていくというものです。ただし、この矯正器具は骨の内側に取り付けられるため、歯の矯正よりも時間と痛みが伴います。
具体的には、歯の矯正が4-6か月を要するのに対し、胸の矯正には2-3年の時間が必要とされています。また、痛みの度合いについても、歯の矯正では強力な麻薬や鎮痛剤が必要となる期間がおおよそ7日程度であるのに対し、胸の矯正ではそれが約40日にも及びます。
さて、費用とタスク、そして手術後みえてきた課題(リハビリ)を以下に記します。
まず、費用について話しましょう。この手術と入院費用は、健康保険の適用を受けることで、約10万円となりました。私が入院保険に加入していたため、この金額はあまり気にかける必要はありませんでした。
ただし、手術後に日常生活を送ることができるようになるまでには4-6か月を要します。その間、収入が途絶えることを考えると、それに相当する金額を準備しておく必要があると感じました。
次に、退院までの工程について説明します。これは5つのステップで構成されています。全工程を終え、退院するまでには、少なくとも6か月は見ておくと良いでしょう。
初診の頃は知りませんでしたが、重度かどうかの判断はヘイラーインデックス(インデックス)を見ます。下記の式で簡単にインデックスを算出できます。本来であればCTで詳細をみて導き出すものですが、それほど複雑ではないのでまずは診察に行くかの判断材料として概算を出しておくと良いでしょう。
ヘイラーインデックス = 肋骨の内側の距離 / 胸骨と背骨の距離
インデックスは通常は2.5ポイントぐらいでその値から離れるほど重症となります。重度の場合はさっと診察して、手術かどうかの判断を求められることがあるので準備に越したことはないです。
参考までにWikipediaに掲載されているヘイラーインデックス算出画像をみます。画像で出されたインデックスは3.59ポイント (25.1cm / 7.0cm)で、心臓が圧迫されている様子が見て取れます。
ちなみに私は8.7~9.0ポイントで、第4胸骨(第6-7肋軟骨)と背骨の距離が通常の4分1ほど(3 cm)の状態、肺と心臓が押しつぶされていました。
個人の実感ですが、胸郭変形は整形上の問題もあるが、年齢をかさねるにつれて硬化する肋軟骨にあります。変形した骨が内臓への負荷をじょじょに増進し、気づいたら循環器系の機能低下、それにともなう免疫力低下につながる可能性があります。医師によると漏斗胸の患者には肺炎・心臓病が多く見られるが、その関係解明はこれからの課題だそうです。
既に入っている場合は必要ありません。胸郭変形の手術は健康保険が適用されるので、通常の民間保険でも同様に適用されます。私はインターネットで安い保険商品を見つけ、総額約20万円(月額2千円)で加入しました。
また、術後の合併症などで想定外に入院・手術費がかさむ可能性があるので、手術が確定したら市区町村の高額医療費制度を利用すると良いでしょう。
まだ、町のクリニックと形成外科との連携がとられるほどナス法手術が業界に浸透してないため、かかりつけの医師より紹介状をもらえる可能性は低いです(2017年時点)。従って、ネットで執刀数や論文提出数など勘案して信頼できる医師を選定します。ナス法が受けられる医療施設はこちらから探し出せます。外科には自分の体調不良とその原因を棚卸するため、診察してもらいに来たとでも言うと伝わるでしょう。
診察ではX線、CTをとって、ヘイラーインデックスの状態と患部の状態をくらべて施術判断がされます。初回ではCT、X線のみ。2回目にあらためて専任の医師より判断されます。医師の判断は一瞬で、施術リスクの重説と施術有無の打診がされ、スケジュール調整となります。
手術を受けるようになっても入院までは普段と変わらない生活が送れます。それ以降は入院関連の慣習、業務フローを知らないと生活上でいろいろと不都合が生じるでしょう。
入院初日。入院手続きで連帯保証人が複数人必要と何人かの事務方に言われます。ただ、この情報は、患者が死亡した際の身柄引き取り先や医療費滞納が起きることを想定して病院が事前に知りたいだけで、法的にグレーな慣習です。マストではないので情報提供を断っても強く追及してこないです。
手術前日。貴重品を持てない、荷物を持てないという制約がかかります。警備体制が整ってていない病院は防犯が弱いのであえて金庫をおかない上、貴重品を預かりません。手術時患者は貴重品をもつことができないので、実質貴重品なしで入院することになります。しかし、手ぶらでは入院手続きできないので1人身で入院するには工夫が必要です。
術後。突然ICUで目が覚めます。そして、6本カテーテルが体に刺さっていて医療麻薬・鎮痛剤投与のルーチンが始まります。ICUから通常病棟への移管は受け入れ態勢によって変動します。術前に麻酔をうたれる辺りまでは記憶にあるが、それ以降のことはまったく覚えていないので混乱する時期です。
病棟移管後。ネット利用禁止。こちらはは昔からの慣習で建前上禁止になっているにすぎず、スマホの普及とともに黙認、あるいは容認するようになっています。ただ、手術前日の荷物をもてないという制約があることと、術後2週間は動くのがままならない状態なので1人身で入院すると外界と接続ができなくなります。
ここでちょうど入院時の様子がTwitterに残っていたので、抜粋します。入院直後、手術前、手術後、退院間近の心境の変化がみてとれます。
入院直後
手術がおもったよりも大変そうと気づきます。
nabinno, 02:26 PM October 01, 2016:
かるい手術と思ったらICUに入ることになってる
// from Twitter for Android [Tokyo, JP]
手術前
手術まで暇なのでPowerShellをいじりはじめます。
nabinno, 05:41 PM October 01, 2016:
Hum
> $($(curl http://www.yahoo.co.jp).Images | foreach {$_.src}) `
| sort `
| uniq `
| foreach { `
curl -Uri $_ -OutFile "$(pwd)\$(basename $_)" `
}
// from Twitter Web Client [Tokyo, JP]
手術後
麻酔の痛みがきれてナーバスになります。
nabinno, 04:06 PM October 08, 2016:
ナースコールは enqueue/dequue もされてるがワーカーがかなりの頻度
でこける。夜になると汚いログがはかれるのは #医療OS の仕様だろうか
...
// from Twitter for Android [Tokyo, JP]
気持ちを落ち着かせるためにEmacsをさわります。
nabinno, 09:01 PM October 11, 2016:
可能なかぎり Emacs で #Xamarin さわりたいので、CentOS 上に samba
立てた。
// from Twitter Web Client [Tokyo, JP]
BashOnWindowsで無茶をやり、少し落ち着きます。
nabinno, 09:18 PM October 11, 2016:
#BashOnWindows の Emacs から #Xamarin さわったら 関連ファイルが消
されたり権限が変更されたりしたのだった ...
// from twmode [Tokyo, JP]
術後ずっと寝たきりでしたが、なんとか動けるようになりました。
nabinno, 06:50 AM October 18, 2016:
胸郭手術時の 🛏 起床と就寝をマスターした
// from Twitter Web Client [Tokyo, JP]
激痛のためノートPCがもてない体になっていました。
nabinno, 08:35 PM October 20, 2016:
ノート PC は肉体的にまだ持てない ...
// from twmode [Tokyo, JP]
退院間近
アクティブトラッカーで客観的にみるよう心がけます。
nabinno, 05:22 PM October 21, 2016:
#MicrosoftBand #HealthVault #MyFitnessPal で記録つけていて、ふと
医療機器がからだに入ってることにきづいた。他人事じゃないいんだけ
ど、おもしろいなあ。
// from twmode [Tokyo, JP]
退院は主治医が判断します、病棟の見回り医師ではないです。そして、たいてい腕のたつ主治医は多忙なので1週間に1度しか顔を出しません。なので、その時の様態次第で退院がどんどん後ろにずれていくので注意が必要です。
退院の条件
入院中は上記の条件をクリアできるようこころがけることです、無為に過ごすと退院が遅れます。
退院直後の一ヶ月間は、ひたすら静養に専念しました。この期間は、風邪を引くと肺炎になる可能性が高まるため、極力体調管理に努めました。
まず、 内科医との関係 について考えました。退院前に外科から処方された鎮痛剤が強力だったため、それと他の薬の組み合わせに注意を払いました。特に、内科で処方される風邪薬自体にも鎮痛剤が含まれていたため、神経系に支障をきたす可能性がありました。私は内科医に、咳をしたときに胸に激痛が走るため、鎮痛剤を利用していることを伝え、抗生物質や鎮咳剤、去痰剤の薬を処方してもらうように頼みました。
また、肺炎を疑いX線検査を行う場合、内科医にはバーが邪魔をして検査が難しい状況にあることを伝えました。そのため、内科医によっては、外科医が処方・処置した鎮痛剤とバーが自分の仕事を邪魔していると考える人もいました。
次に、 免疫力を高める ための工夫をしました。食事に関しては、「MyFitnessPal(Under Armour)」のような栄養を主としたアクティビティトラッカーを用いて、不足している栄養素を観察し、機能食品などで不足分を補いました。私は皮膚の組成に関係しそうな栄養素、特にタンパク質とビタミンCを意識的に摂るように心がけました。余裕が出てきたらスーパー食材、外食チェーンHPの栄養表をみて、実際に食事し体調を観察します。体調はWithing BodyとMS Bandでトラックすることで管理が楽でした。
運動については、医師からウォーキング程度に控えるよう指示されました。この期間は、胸郭や脇の傷周辺の皮膚組織に動きをつけない運動、例えばスクワットなどで筋力を回復させる程度にしました。また、無理のないストレッチで胸郭に埋め込まれたバー周辺の皮膚を徐々に伸ばし、新しい皮膚組織を作るよう心掛けました。室内での自重トレーニングよりもジムのトレーニングマシンで、リハビリという視点で負荷を調整しながら無理なくおこなうと良かったかも知れません。実際にトレーニングする前に医師からリハビリスタッフを紹介してもらうのも手だと思いました。
3つの運動
また、入院時に手術用コンプレッションウェアのタイツを着ることになりますが、退院後はスポーツ用コンプレッションウェアをシャツ、タイツともに着ると良いでしょう。手術時もそうですが、退院後も適度な負荷を皮膚に与えることで交感神経の活性化を促します。
私はできませんでしたが、免疫力向上は準備するのに時間がかかるので入院・手術前から取り組んでおくと良いでしょう。
退院から3ヶ月が経過した時点での私の状況を記載します。リハビリの経過を示すために、体組成の一部を以下に示します。
体組成 | 入院前 | 退院後1か月 | 退院後2か月 | 退院後3か月 |
---|---|---|---|---|
胸囲 (cm) | 68.5 | 80.8 | 82.7 | 82.9 |
体重 (kg) | 51.0 | 46.6 | 49.6 | 50.8 |
筋肉 (kg) | - | 39.3 | 41.4 | 42.4 |
脂肪 (kg) | - | 4.9 | 5.8 | 5.9 |
退院後1ヶ月目は、胸囲が劇的に変わりましたが、体重は低下しました。これは、手術直後の痛みや無理のないストレッチにより、日常生活の中で行っていた運動量が大幅に減少し、筋肉が落ちてしまったためです。私はノートパソコンすら持つことができなかったので、筋力の低下は想像通りの結果でした。
しかし、退院後2ヶ月目には、リハビリの効果が少しずつ現れ始めました。体重が増え、筋肉量も少しずつ増えてきました。この頃から、日常生活の中での動きも自然と増え、心地よい疲労感を感じるようになりました。
そして、退院後3ヶ月目には、体重と筋肉量がさらに増えました。この頃になると、日常生活の中での動きはほぼ元の状態に戻り、運動も自然と増え、心地よい疲労感を感じることが多くなりました。胸囲も着実に広がり、見た目も大きな変化が出てきました。私自身、この結果を見て、手術の決断が正しかったと自信を持つことができました。
予想通り、心臓と肺にかかっていた圧迫感は完全に消え去りました。毎日、少しずつ体調が改善していくのを感じ、自身の身体が元の状態に戻っていく様子を実感しました。特に、階段を上るときの苦労がなくなったことは、大きな喜びでした。
手術の決断は、仕事ができなくなる期間を含む全体のコストと、今後のリスクを考慮してのものでした。その結果、この手術を受けることを選んだ自分自身を、今では肯定的に評価できるようになりました。
ただし、完全に一段落つくまでにはまだ時間がかかります。3年後にはバーを取り出す抜去手術が控えています。その手術が無事に終わり、経過観察も完全に終わるまで、私の戦いはまだ終わらないのです。
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ATKerneyの課題解決パターン は、課題の本質を見極め、効果的な戦略的構造化を通じて解決策を導き出す手法にフォーカスしています。この冒険の旅は、解決者と協力者たちが心を一つにし、課題に立ち向かう様
私はいわゆる就職氷河期世代です。周囲から時折漏れ聞こえる不平のような言葉がありますが、それを単なる不平として片付けるのはもったいない気がします。できれば、その中に新しい視点を見つけ、次のチャンスへ繋げ